ギャラリストのよしなごと

思い出

アップルコンポート

我が家のリンゴは早生で、既に収穫の時期を迎えている。 ”家にリンゴの木があるなんていいじゃない、ドイツって感じがするわぁ!”と言ったのは姉だ。 確かに私だってその昔日本にいた頃はそう思っていたから姉を責める気はない。 でも。。。 「毎朝起きると…

留学

”留学が難しくなった今、実は誰でも簡単に留学ができるって知ってた?” なんだか謎掛けみたいな話をする友人に私は頭を捻った。 彼女は大学で先生をしていて、呼ばれればホイホイと世界中の様々な大学に教えに行ったり、ワークショップを開いたりする活動的…

人を招く方が好き

お客として招待されるより、招く方が私は好き。 ならば客人をもてなすのが好きなのか、と問われればそれもちょっと違うような気がする。 休みの日くらい一人で何にも構わずに自由にしたい、と思う気持ちもいっぱいあるし、でも同時にお客たちと一緒に食べた…

蒸し暑い日には。。。

ドイツの夏は一様に乾燥していて爽やかな夏と言われている。 湿度が低いので、強い日差しがぐんぐんと気温をあげても木陰にはいれば、スゥッと汗が引いていく、そんな夏だ。 でも蒸し蒸しと暑くて湿気に圧迫されるような、日本の夏を彷彿させる日も時にはあ…

髪を切る

髪を短く切れば切るほど、ちょっとその髪が伸びただけで気になってしかたがないのは不思議なことだ。 一年くらい前までは肩に届くほどの髪の長さだった。 その頃は美容院に行くのを忘れてしまうほど、髪の長さに無頓着でいられたのに、外出制限が開けてバッ…

旅にでたい

一昨日くらいから夏日のミュンヘン。 物凄い快晴が広がっている。 目の覚めるような青空を眺めていたら無性に旅にでたくなった。 ”こんな素晴らしい天気の日に、室内で扇風機をガンガンかけて仕事ばかりしているなんて、私、馬鹿じゃない?”という気になって…

年老いる

父が退職してすぐに、とある田舎にある大きな古い家を買い求め、一年がかりで手直しをしてそこに両親は住み始めた。 夏は都会の暑さが嘘のように涼しくて、暑い夏が苦手だった母を喜ばせたし、冬はスキー場が近いこともあり、父にとっては趣味のスキーを楽し…

手紙

”最近メールを書くのをやめたんだ” やってきたお客は私にそう言った。 毎朝メールボックスを開けると大量のメールが来ている。 でもその中で本当に大事なメールは数えるほどしかない、その上早急に返事が必要なものなんて滅多にない。 一日二日返事を待った…

薄青の目

今日、ギャラリーオーナーの昔からの友人で、写真関係の会社を経営している夫婦の元にお邪魔した。 彼らは”カルロス”と名付けられた真っ黒いツヤツヤした長い毛を持つ雑種犬を飼っている。 漆黒の毛がびっしりと覆った顔には薄青のガラス玉のようにまん丸で…

老いる

日本へ帰って行った私の友人が和菓子をいくつか送って来てくれた。 それのお礼が言いたいのと久々に声が聞きたくなって、スカイプで彼女に連絡をした。 PC画面上に彼女が映し出されて、私は”あれっ”と思ってしまった。 彼女の表情にも声にも張りがなくて湿っ…

思い出はワイン

思い出というものはワインに似ている。 静かに時をおき、熟成させていけばいくほど味がまろやかに、そして深みを増す。 新しい思い出は、それがどんなに特別な出来事であったとしても、誰もが経験したことのないようなものであったとしても、子供の頃のどう…

子供フェロモン

一人のお客が10歳くらいの男の子を連れてギャラリーにやってきた。 お母さんらしきその人は作品を見て回りたいのに、その子は彼女のサマードレスの裾を引っ張って、”早く行こうよ!”と急かしている。 ギャラリーではごくごく普通に見られる光景だ。 こういう…

自宅勤務

ギャラリーは月曜日と火曜日をお客の予約日と決めている。 お客と相談して、その時間に合わせて私は彼らの好みの作品を出しておく。 彼らは自分の都合の良い時間に、自分の好きな作家作品を自由にのんびりと見ることができるとあって、この両日には結構予約…

黄色い毛糸

子供が両親の遺伝子を受け継ぐのは当たり前のことなのだけれど、私の場合十中八九父の遺伝子でできているような気がする。 外見的に父に似ているのはまだ許せるとして、一番嫌なのはあの自分勝手で傲慢な部分が私の中に脈々と流れてしまっていることなのだ。…

BBQ

気がついたらもう私の周りにはほとんど日本の友人がいなくなってしまった。 ドイツ人の夫を病気で亡くして帰って行った人、ここでの仕事が軌道に乗らず日本で再就職するべく帰っていった人、両親の介護を一身に担うため帰って行った人。。。一人減り、二人減…

自分らしく

音楽家だった友人の夫が亡くなって、その膨大なレコードやCDをどうにかしたい、と連絡を受けたのはもう3年も前のことだ。 ギャラリーのオーナーが無類の音楽好きであることから連絡をしてみると、彼はホクホク言って友人からそれらのコレクションを丸ごと全…

列車の旅

ちょっと気を許しているうちに、また世の中が怪しくなっているではないか。 この目を疑うほどアメリカのコロナ感染者の数字がニュースで踊っていると思ったら、何と日本もじわじわとコロナに攻め込まれている。 ”ドイツはどうなんだ?”、と問われれば、やは…

短冊飾り

3年前の今日、母は緩和病棟の一室で静かに亡くなった。 ちょうどまる1ヶ月の間、姉と私は緩和病棟で母と共に暮らした。 母と過ごした最後の1ヶ月の日々は、もちろんとても辛くて悲しくて、やるせない日々だったことには違いないのだけれど、でもあの最後の30…

ガリ勉

せっかくマーガレットの大きな鉢植えをギャラリーのお客からもらったのに、一晩ですっかり虫に喰われてしまった。 その姿は痛々しいほどで、”このマーガレットの姿を人間に置き換えるならば、まさに瀕死の状態だよなぁ”と思った途端、胸がぎゅーんっと縮んで…

思い出の小石

私の今までの人生なんて語るほど冒険に満ちていたわけでもないし、ドラマチックな出来事が華やかな色を添えてくれたわけでもない。 退屈そのもの、語るに及ばない私の人生なのだけれど、それでも私にとってはその時々に喜怒哀楽の小さなドラマが繰り広げられ…

バトン

”君は本気を出せばきっとすごいのに。。。君のお姉さんより才能あるかもしれないのに。。。” 私は物心ついた頃から学校の教師たちにそう言われ続けた。 私の姉はさしてガリ勉でもないのに飛び抜けて勉強ができたし、全国大会で入賞を果たすほどの俊足の持ち…

それってダメ

日本には法律で決まっているわけでもないのに、”それダメだよぉ!”とか、”そんなことするべきじゃないよね。。。”となんとなく世の中のみんなが牽制し合って、自由に振る舞えないことがいっぱいあるような気がする。 先日姉に似合いそうな夏のブラウスを見つ…

母の料理本

ひとり暮らしの食事なんてたかが知れたもの、手の込んだ物を作ったって喜んでくれる人がいるじゃなし、ついつい適当に済ませてしまいがちになる。 とは言え、これがまさに躾というものなのだろうけれど、私はジャンクフードに手を出して、ちゃっちゃっと食事…

忘れたくない思い出

今年はやけに早く半年が過ぎてしまった。 というより、何もしないままに日々が過ぎ去ってしまって、気がついたらもう6月も終わりになっていた、という方が当たっているのかもしれない。 私の暮らしはいつだって平坦で代わり映えはしないのだけれど、それで…

ミュンヘンも夏

最近どうも子供時代のことが”ふらっ”という感じで頭の中をよぎっていく。 年齢を重ねれば重ねるほど過去が近づいてくる、と言われているけれど、私の場合もそうなのだろうか。 時々すっかり忘れていた出来事がヒョコンと顔を出すことがある。 私の子供時代の…

それでいいのだ

アートのことってよくわからなくて。。。と言われることがしばしばある。 そんな時、気の利いた返事ができればいいのだけれど、大抵私は”そうそう、よくわからないよねぇ!”とつい同調してしまう。 すると”えっ?、あなたギャラリストじゃない?アートのこと…

一枚の写真

子供の時の写真が届いた。 ”思わぬところから昔の写真がたくさん出てきたから。。。”とわざわざ姉が写真を送ってくれた。 私は三人兄弟の末っ子だから、子供時代の写真が兄や姉に比べると圧倒的に少ない。 父も母も子育て真っ只中で、もう三人目の娘の写真を…

友達親子

私は人を嫌いになることは滅多にないけれど、苦手な人は幾人かいる。 もともとあまり人に執着しないせいか、私は特定の人に対して心の奥底でいつまでもメラメラと怒りの炎を燃やしたり、歯軋りして憎らしいと思うようなことは滅多にない。 もちろんのこと、…

五年伝説

私は2020年という年に特別な思いを抱いている。 私の人生はどういうわけだか五年刻みで何かが起きるようになっている。 それは自分で計画したものでもないし、そうなるように仕向けたわけでもない。 いきなり予告もなしに、”今だよ、今!この波に乗らなくち…

小姑

義姉が倒れた。 命に別状はないもののしばらく入院をして様子を見るのだそうだ。 義理姉は、私よりも3歳年上の関西人。 フランス語の教師をしていたということと一人っ子でマイペースな人、と言うことくらいしか私はよく知らない。 彼らは結婚して何十年にも…