ギャラリストのよしなごと

自分らしければ

f:id:keikothings:20200511023247j:plain

 

だらしなく伸びた髪をまだどうにもできないでいる。

美容院が再開され、みんながこぞって予約を入れているらしく美容師さんは大わらわだと聞いた。

私の予約は”えっ?”と言うほど先で、このボサボサの髪のせいで気が変にならなければいいが。。。などと大げさにため息をついている。

 

気になっているからなのだろうが、この自粛時を機に”髪を染めるのをやめた”とか、”魅力的なグレイヘア”、”夏の髪型20選”などの日本の髪に関する記事がやたらと目に止まってしまう。

そんなのを一々読んでいたら、伸びきったこの髪にますますイライラが募ってしまうのだが、つい一つの記事を読んでしまった。

 

f:id:keikothings:20200511023452j:plain

 

そこには、40代後半の女性が髪を染めるのをきっぱりとやめて本来の自分と向き合って自然体で暮らすようになった、とあった。

女性記事によくありがちのちょっぴり上っ面を撫でたような、綺麗事を並べたような記事だった。

白いものが目立つようになって、それを染めるか染めないかなんて自分の好きなようにすればいいわけで、取り立てて記事にするほどでもないような気もするが、それほどまでに白髪の問題は捨て置くことができないと言うことなのかもしれない。

記事の後に様々な人のコメントが書き残されていたが、”ただ老けて見えるだけで好感度はない”だの、”自分からあえて老年に見せる必要はない”だの、日本女性たちが圧倒的に白髪にマイナスのイメージを持っていることがよくわかる。

 

f:id:keikothings:20200511052649j:plain

 

ギャラリーの上階はマンションになっていて、その中の何名かの人とは出会えば立ち話をする仲だ。

その中の一人の女性はいつも完璧なブロンドに染め上げていて、真っ赤な口紅と相まってなかなかセクシーな女性だ。

彼女のことを私はもう60歳後半かあるいは70歳前半だと思い込んでいたけれど、たまたま立ち話をした折に彼女が少し前に50歳の誕生日を迎えた、と知ったのだった。

 

一筋の白髪も見つけることができなくとも、輝くような金髪であったとしてもそれだけで若く見えるわけではない、と彼女を見ていて感じる。

 

髪の悩みは老若男女、古今東西、皆がそれなりに持っていることの一つだと思う。

特に女性にとってはいつまでも若く見られたいと願う気持ちが強いだけに、白髪に対する抵抗感が強いのかもしれない。

 

f:id:keikothings:20200511053006j:plain

 

でも。。。

若さとはそんなに魅力的なものなのだろうか。

本心をいえば人生をリセットしてもう一度一から始める、と言うのならばまだしも、若かったあの頃に戻りたい、とも若く見られたいとも私は思わない。

特に若い時に大真面目でやった数々のことが頭の片隅にフッと浮かんでくるたびに、自分で自分が恥ずかしくて消え入りたくなる。

あんな無知で傲慢な自分には絶対に戻りたくない。

 

若く見られるのも御免蒙ると言い切りたい。

苦労した事実、失敗からなんとか立ち直った自分、良くも悪くも重ねてきた経験は、人から見れば、”これっぽっちのことしかしてこなかったの?”と呆れられるかもしれないが、少なくとも私にとっては財産だ。

悩んで増えた白髪ならば大歓迎だ、と思う私は単なる天邪鬼なのだろうか。

 

f:id:keikothings:20200511053927j:plain

 

男性は年齢を重ねるごとに”青さ”が削ぎ落とされる。

彼らが背負い込んだ責任や世の中を渡って行く自信が渋みとなって気骨のある表情を作り出す。

白髪だろうが髪が薄くなっていようが、そんなことどうでも良いと思わせる雰囲気を彼らはまとうことができる。

女性だって同じことではないか、と思うのは私だけだろうか。

若い女性のハツラツとした弾ける美しさは見ていて気持ちの良いものだけれど、子供持つお母さんのたくましさと優しさ、働く女性たちの配慮のある先を見通す力や生活力だって輝きに満ちていると思うのだがどうだろう。

 

そんな話をギャラリーオーナーと散歩しながら話した。

彼は”白髪の混じる知的な女性たちはとてもセクシーだよね”と私に同調しながら、最後に言った。

「世の中のことをまるで知らない女の子たちを見ると、”わぁ、なんて無知なんだぁ”と呆れてしまうけれど。。。まぁそこが可愛いんだけどねぇ。。。」

遥か彼方の空を夢見るように眺めている彼の鼻の下は伸びっぱなしだった。

”もうほんとに、男って。。。”

 

私のちょっと色素の薄い白髪混じりの髪が春風に巻き上がり、”自分らしければそれが一番いいのさ!”とどこからか声が聞こえたような気がした。

 

f:id:keikothings:20200511054918j:plain