ギャラリストのよしなごと

バトン

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”君は本気を出せばきっとすごいのに。。。君のお姉さんより才能あるかもしれないのに。。。”

 

私は物心ついた頃から学校の教師たちにそう言われ続けた。

私の姉はさしてガリ勉でもないのに飛び抜けて勉強ができたし、全国大会で入賞を果たすほどの俊足の持ち主でもあった。

 

それに引き換え私はというと、何だかいつもぼんやりしていたような気がする。

とは言っても別に私は落ちこぼれでもなかったし、何をやってもダメってほどでもなかったはずなのだけれど、あんな切れ者の姉をもっていれば、誰だって私のことを”昼行灯”としか思えなかったのではないだろうか。

教師からはいつだって”本気を出せよ!”とハッパをかけられていたし、友人たちからは”もっと真面目にやればいいのに。。。”と小馬鹿にされていたようなところがあった。

確かにその当時の私は、外界の全てに薄くモヤがかかっているような感覚を持っていた、そして誰かに耳栓を突っ込まれてしまって音という音すべてがダイレクトに聞こえていないような気もしていた。

でもそれが普通なのだ、みんなそんな世界の中で暮らしているのだ、と思っていた。

 

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姉より上背のあった私は陸上部の教師に殊の外期待をされた。

ひょろりと背が高い私は未熟だけれど、鍛えれば姉以上の逸材になるだろうと彼は踏んだのであろう。

周囲から”贔屓じゃない?”と非難の声が聞こえてくるほどに彼は私に目を掛けてくれた。

でもそんな彼の思惑はおかしいほどに外れ、私は万年補欠の席を温めているばかり。。。

試合がある度に選手の友人たちが走るのをキーキー声を枯らして応援するのが、私の唯一の役目だった。

 

そんな私のそばに先生はやってきて、”お前、選手になれなくて悔しくないか?一度でいいからお前の姉さんのようにひたむきに懸命に走ってみろよ”、そんなことを私にしばしば耳打ちした。

それでも私には先生の言葉は馬耳東風、応援をする方がずっと楽しくて、試合に出て活躍したいなんてみじんも考えていなかったような気がする。

 

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ある試合の日のこと。

リレー選手の一人が腹痛を起こした。

予選は勝ち抜いているのだから、補欠の誰かがその選手の代わりに走らなくてはならない。

先生は迷いに迷って私の肩を叩き、”お前が走ってこい!”と告げた。

誰もが意外だったのだろう、そう、この私だってそんな役目を振られるとは思ってもみなかったのだから、皆が一斉にざわざわっとしたその時の空気の意味を私はとてもよく理解できた。

 

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私は走った。

どういうわけなのか信じられないほど足が軽くて、どうしたことなのか走れば走るほど白く自分の周りを覆っていたモヤが後ろに流れちぎれて消え去っていく。

気がついたら私は次の選手にバトンを渡していた。

準決勝を勝ち抜き、私たちのリレーチームは新記録を達成して優勝した。

 

チームの足を引っ張ることなく走り抜くことができた。

こんなことが起こるなんて。。。。私は本当に嬉しかった。

自分が初めて自分になれたような、たった今目が覚めたような、目の前の全てが澄み渡ったような、とにかく洗われて新しい自分が誕生したような気分だった。

 

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ふと先生のバッグの上に無造作に置いてあった賞状が目に入った。

”優勝”の大きな文字に続き、リレー選手4名の名前が刻まれていたが、でもそこには私の名前はなかった。

試合前に登録された選手の名前、そう、腹痛を起こして走ることができなかった彼女の名前が記されていたのだ。

 

”気持ちよく走ったのだからいいじゃない!”、”新しい自分になれた、と思えたのだからそれで十分じゃない”と思いたかった。

でもそう考えようと思えば思うほど、悔しさがこみ上げる、涙が迫り上がってくる。

今までは選手になることなんてどうでもよかったのに、清々しい気持ちで走り、チームに貢献でき、そしてみんなから称賛されたその瞬間から、私は今までには思いもよらなかった屈辱感やら嫉妬の情が満ち満ちてくるのを抑えることができなくなっていた。

 

本当にあの日を境に私は変わった。

私の目の前にあった霧はすっきりと晴れ渡り、耳に押し込まれていた耳栓が抜け、新しい世界が開けた。

それと同時に、それまで全く感じることのなかった”無念さ”、”嫉妬”、”悔しさ”。。。そうした黒々とした気持ちもまた覚醒してしまったような気がする。

 

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この話を私は包み隠さず母に話した。

”そうねぇ、あの日からあなたは大人になったのね。

大人って箱の中にはいいものばかりが入っているわけじゃないのよ。。。

汚くて嫌な部分とどう付き合って、どう折り合いをつけていくかで、その人となりが透けて見える。

大人になるってそうした嫌な部分にも自分なりに対応できる準備ができたってことなのよ。

少し残念なのは、ケイコちゃんがもう二度とあの可愛くて無邪気な子供の世界に戻れないってことかな。

まっとにかく。。。ようこそ、大人の世界へ!”

 

母はとっても嬉しそうに笑って私を彼女の腕の中に包むようにした。

 

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さて。。。

”ブログバトン”というのが回ってきた。

普段の私ならば、”こうした面倒には巻き込まれたくない(何が面倒なのかはよくわからないけれど。。。)”と思うタチなのだけれど、誘ってくださった方、ウナギーヌ・ユーコさんがとっても元気で素敵で慈愛に満ちた方なので、乗っかってみることにした。

彼女のブログは私にとっては心身のマッサージチェア

読み進めていくと肩の力がスッと抜けて楽になり、気持ちが柔らかになる。

そして。。。くせになる。

 

happyunagi-yuko.hatenablog.com

 

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 一番古い記事 (これはちょっと恥ずかしい。。。)

kunstkeiko18.hatenablog.jp

 

お気に入りの記事とかは、勘弁してほしい。。。

 

バトンというからには誰かにそれを渡さなくちゃいけないようで。。。これには困った。

そうだ!

誰にも見向きもされない私のブログを結構最初の頃から読んでくださって、励ましてくださったTAKI ママさんならばきっと受けてくださるかな。

二人の男の子のママで精力的に旅を続けるバイタリティ溢れるドイツ在住のブロガーさん。

今は少し旅に出るには時期が悪いけれど、それでも叶う範囲で旅の紹介を続けていらっしゃるのには脱帽!
ブログではお子さんと一緒に楽しめる旅を中心に紹介されている。

でも、大人の私も”ここ、いつか行ってみたいなぁ!”といつも思っている。

TAKI ママさん、どうぞよろしく!(お気に召さなければどうぞスルーしてくださいね。)

www.takimama.com