ギャラリストのよしなごと

大人になってから

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息子が20歳にもなったのに仕事経験が全くないとか、大人たちと上手に会話をすることができない、などなど、親達の心配を耳にした。

そばでそんな話を聴いていると、私は縮こまり、耳を塞ぎそうになる。

まるで子供の頃の私のことを言われているようなのだ。

 

私は子供の頃、時に無意識に、時に意識して末っ子という特権を振りかざすようにして生きてきた。

母が忙しそうに動き回っていて手助けが必要なことを知っていながら、母に手を貸そうともしなかった。

どうせ私みたいな役立たずが手伝っても母の足手まといになるだけ、しっかり者の姉に任せておけばいい、と斜に構えていたのだ。

そんな私を見て姉はよく母に不平を言っていた。

“ケイコって何にも手伝いしないまま大人になってしまって、将来すごく困るんじゃない?お母さんから何か言ってやってよ!”

でも母はそんな姉に向かって笑いながらこう切り返した。

“自分がやらなくてはならない状況が来たら、必ずできるようになるのもだから、放っておいても大丈夫。ただちょっと人より苦労するだけなのよ。”

 

そう、母の言った言葉通り、私は大人になってから一応家事は何でもこなすようになったし、今では家のあらゆる仕事をとても好きだと言っても言い過ぎではない。

でもあの頃母からもっと料理の味付けから染み抜きの方法までちゃんと習っておけばよかった、と今心から思っている。

あの時足手まといになっても母のやっていることをもっとしっかりと目に焼き付けておけばよかったのに、と考える。

大人になってみなければわからないことってあるのだ、でも大人になってからでも苦労しながらも自分なりの方法を見つけていけるのもまた真実だと私は思っている。

母は今の私をどこからか覗き見て、感慨深げに言うはずだ。

“まぁ、あのケイコがちゃんと家事一般ができるようになるなんてねぇ。”

 

今日は原嶋亮介さんのLady Primulaを紹介しよう。

これは婚礼調度品の一つ、化粧具として使われた古い漆器椀に色とりどりの花々を描いた作品である。

底から這い上がるように描かれた花々は、この化粧道具を使った女性が一つ一つ大人になってから学び、身につけていった知恵を表しているように私は思えてならないのだ。

 

 

(少しだけイタリアの写真をお楽しみいただければ。。。嬉しいです!)

 

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