ギャラリストのよしなごと

私のお気に入り

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Raindrops on roses and whiskers on kittens
Bright copper kettles and warm woolen mittens
Brown paper packages tied up with strings
These are a few of my favorite things

バラをつたう雨だれや
子猫のひげ
ピカピカの銅のやかんや
あったかい羊毛のふたまた手袋
紐で結ばれた茶色い小包
それがわたしのお気に入り

 

こう始まる歌を多くの人はご存知のはずである。ミュージカル、サウンド・オブ・ミュージック(1959)の中の一曲だ。

ジャズに編曲されたりして今でもあちこちで耳にする名曲だが、私が好きなのはどちらかといえばその歌詞の方である。

犬に噛まれたり、蜂に刺されたり、悲しい時にはお気に入りのものを思い浮かべさえすれば、“そんなに悪くはない、と”思えてくる、という素敵な歌である。

まぁ世の中、犬に噛まれたり、蜂に刺されたりするよりもっと陰鬱で根深い問題が溢れていて、“私のお気に入り”を思い出すくらいではそうそう気分は良くなってはくれないのが辛い。

でもこの歌詞の中に出てくるお気に入りの数々がなんでもない日常の普通の物であることが救いだな、と私は思うのだ。

 

正直に話そう。

私は気持ちのどこかで“人よりも私は特別でありたい”、なんて思っていた。

でもそれと同時に冴えないありのままの自分の能力も性格もよくわかっているわけだから、その現実と願望の差にいつも愕然としていたようなところがあった。

そう、私はありのままの自分を受け止められないでいたのだ。

誰もがきっと心の中に持っているようなちょっとした意地悪さ、幼稚さ、あるいは俗っぽさを封印して理知的で良い人間に自分を見せたかった。

また何にも起こらないつまらない日々の暮らしなんて存在しないかのように振る舞いたかった。

 

そんな自分に半分嫌気をさして私はここに文章を書き始めたのだ。

起伏の少ない暮らしの中に起きるどうでもいいような、それでいて誰もが“そうそう、そういうことあるよね!”ということや、小さくて普段は無視しているような気持ちの揺らぎや本音に焦点を当ててみようと思い立ったのだ。

それが成功しているかどうかは分からないけれど、でもその試みが自分を大きく変えてくれることになるなんて思いもよらなかった。

自分が特別でありたいなんて気持ちは嘘だったみたいに消え去った。

なんの変哲もない生活をして、決して目立つことのない私、そんなありのままの自分、そう、これが“私のお気に入り”なのである。

 

今日紹介するのは、伊藤計一さんのゴジラガンダムである。

茶道の深淵な世界の中にゴジラガンダムを登場させたユニークな作品である。

日本の文化を語る際、伝統文化と現代のサブカルチャーを同列に語られることが多い。それらは非常に違っているのだが、でも同じ国民が作り上げ、それらが混じり合った中で普通の暮らしが営まれていることがとても興味深い、と私は思っている。

 

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